大規模修繕工事の補修箇所は
マンションでは、およそ12年~15年に一度の頻度で
大規模修繕工事を行うことが望ましいとされていますが
実際にどのような工事を行うのかイメージが湧かない人もいると思います。
あちこちのマンションで、足場を設置して、保護幕を取り付けて
工事をしているのを見かけると思いますが
実際にどのような工事をしているのでしょうか。
大規模修繕工事で軸となる工事は
躯体の下地補修工事を含めた「外壁補修工事」
金属扉や鉄柵等を塗り替える「鉄部塗装工事」
打継目地や建具廻りの「シーリング打替え工事」
屋上や廊下・バルコニーからの雨漏れを防ぐための「防水工事」の4つとなります。
以下がそれぞれの工事の内容です。
外壁補修工事
マンションのような鉄筋コンクリート造の建物のコンクリートは
竣工当初はアルカリ性ですが
経年とともに徐々に中性化していきます。
中性化の進行によって内部の鉄筋が錆びはじめ
錆により鉄筋の体積が膨張して、コンクリートにひび割れを生じさせたり
内部鉄筋の露出やタイルが部分的に剥離するする危険があります。
こうした劣化した箇所を補修したり、劣化の進行を遅らせたりする為に
外壁補修工事では
躯体(コンクリートの壁や床)のクラックや欠損などを部分的に補修した後
タイルの張替や塗装面の塗り直しを行います。
鉄部塗装工事
鉄部には錆の発生を防ぐ為塗装が施してありますが
塗料が経年と共に劣化して錆びやすくなり、そのまま錆をほっておくと
鉄の強度が弱まり欠損や脱落に繋がります。
その為、定期的に塗装をし直す必要があります。
鉄部塗装工事では、塗料を塗る前に
下地処理(ケレン)をして素地をキレイに整え、塗装をし直します。
定期的に塗装をすることで鉄部をしっかりと保護し
耐久性と美観の向上につながります。
シーリング打替え工事
シーリングとは、外壁材の隙間や継ぎ目を埋めるゴム状の材料で
建物の防水性や気密性を保つ役割があります。
シーリングも経年により徐々に劣化が進行して
硬化やひび割れ、破断等が発生することがあり
場合によってはひび割れ・破断した箇所から
室内に雨水が漏れてくることもあります。
シーリングの打ち替えは
劣化したシーリング材をすべて取り除き
新しいシーリング材を充填する方法です。
この方法により、建物の防水性や気密性といった
シーリングの効果を復活させることが出来ます。
防水工事
大抵のマンションの屋上は戸建てのような傾斜のある屋根は無く
平面になっており、防水処理が施されています。
雨ざらしの環境にある屋上やバルコニーは
マンションで最も劣化しやすい箇所の一つです。
屋上を覆う防水層は経年により劣化して
次第に防水層のふくれや破れなどが発生し
最悪の場合室内の雨漏りの原因につながります。
上記3つの工事と違い
必ずしも足場が必要な工事ではありませんが
多くの防水工事のメーカー保証期間が10年と定められていることや
バルコニーの防水工事の場合
足場があれば室内を通ることなく施工が可能なことから
大規模修繕工事に併せて行うことが多いです。
防水工事には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水等
様々な工法があります。
また、共用廊下においても
コンクリートの乾燥に伴う収縮やモルタル浮きやひび割れを防ぐため
防水工事が行われますが
近年は汚れなどの美観上の改善の他に
歩行者が滑って転ばないようにするための防滑性能の向上を目的として
長尺塩ビ防滑シート貼り工法が主流となっています。
上記4つの工事は、大規模修繕工事の基本的な工事となりますが
必ずしも全て行わなければならない訳ではありません。
例えば共用廊下が屋内にあれば
鉄部やシーリングの劣化度合いは屋外に比べて格段に低い傾向にあります。
これは雨風や直射日光が直接当たらないことによるもので
場合によっては大規模修繕工事の施工箇所から
除外することも出来ます。
そのためにも、可能ならば施工業者から見積を取る前に
建物の劣化診断を専門家に依頼して
現状を知ることが望ましいです。
多額の費用が掛かる大規模修繕工事
必要な工事とそうでない工事を見極めて
最適解をみつけましょう。
個人賠償責任保険について
マンションのオーナーとなった際に
ほとんどの方が火災保険の加入を検討されるかと思いますが
火災保険と併せて付保しておきたい保険が
「個人賠償責任保険」です。
「個人賠償責任保険」とは
自動車事故以外の日常生活の事故により
他人にケガをさせたり他人のモノを壊してしまい
法律上の損害賠償責任を負った場合に補償が受けられるものですが
この保険、マンションにはつきものである漏水事故にも対応しています。
マンションで漏水事故が発生した場合
被害に遭われた下階のお部屋を原状回復する必要がありますが
この費用は漏水発生元である上階オーナー(または居住者)が
全額負担しなければなりません。
その際、「個人賠償責任保険」を付保していれば
この費用の一部または全額が補償の対象となり
上階オーナーの負担軽減が見込めます。
下階の原状回復費用は被害の状況によってまちまちですが
なかにはかなり高額な請求となるケースもあります。
例として、私が直近でご対応させていただいた
漏水事故3件の下階の原状回復費用をあげますと
・Aマンション 663,300円(天井ボード交換、クロス貼替、フローリング貼替)
・Bマンション 316,250円(天井ボード交換、クロス貼替、照明器具交換)
・Cマンション 1,370,600円(天井・壁ボード交換、クロス貼替、フローリング貼替)
※いずれも税込み
個人でお支払いするにはかなりの負担ではないでしょうか。
管理組合でも共用部分で付保している
「マンション総合保険」の特約としてこの保険が付いていることがあり
その場合、マンション内の漏水事故であれば
どのお部屋でも保険申請が可能ですが
近年の保険料値上げにより
この保険を付保しない管理組合も増えてきています。
ご自身のマンションでこの保険に加入しているか
一度ご確認をお勧めします。
もし管理組合でこの保険を付保していない場合は
ご自身の火災保険に「個人賠償責任特約」が
付保されているか確認してみてください。
(保険会社によっては「日常生活賠償責任特約」だったりと名称は様々です)
火災保険以外でも
例えば自動車(じどうしゃ)保険に付いているケースもあります。
自転車(じてんしゃ)保険でしたら
それだけで「個人賠償責任保険」と同じ補償が受けられますので
新たに付保する必要はありません。
いずれの保険にもない場合は付保を検討してみてください。
月額にすると数百円程度の負担で付保出来るところがほとんどですので
もしもの備えとしては高額ではないと思います。
漏水事故はいつ発生するかわかりません。
突然高額な費用を請求をされる前に、備えておきましょう。
大規模修繕工事とは
マンションを適切に維持管理していく上で重要な「大規模修繕工事」
理事会役員や修繕検討委員にならないと
どのような工事をおこなっているかなかなか分かりづらいと思います。
※修繕検討委員とは、大規模修繕に関する計画や決定事項などを
専門に行う委員会のメンバーのことです。
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕工事は
「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や
必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち
工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。」
と書かれており、大体12年~15年に一度行うのが望ましいとされています。
具体的には、屋上やバルコニーの防水工事
外壁の下地補修・タイルの貼り替え・塗装、鉄部の塗装
シーリングの打ち替え等行い
場合によっては給水管や排水管の更新を行う場合もあります。
但し、工事内容はあくまでも管理組合が決めることであるため
必ずしもこの内容で行うとは限りません。
例えば屋上防水工事は足場を必要としないため
防水の状態が良好であれば、実施時期を延期することもあります。
大規模修繕工事を行うにあたり
理事会役員や修繕検討委員は次のようなことを行っています。
①建物の劣化状況を調べる
②劣化状況を基に、工事の内容を決める
③決めた工事内容で、(複数の)業者から見積りをとる
④見積りを基にどの業者に依頼するか決める
⑤工事内容、業者を決めたら総会に上程する
※上程とは、議案などを会議にかけることです
⑥総会にて可決承認後、業者と契約し、具体的な工事の日取りを決める
⑦工事中、追加で必要な工事が発生した場合、都度検討する
⑧工事が概ね終了したら、検査を行う
⑨検査終了後、業者から提出される工事完了報告書を確認し、工事終了
工事費用は戸あたり100万円が目安とされていましたが
築年数によりやらなければいけない工事が大きく変わってくるので
一概にはいえません。
また、最近は物価高騰のあおりを受け、工事金額が跳ね上がっているため
予想より見積が高額になることが多いです。
資金不足により工事が延期とならないように
管理組合は普段から修繕積立金を計画的に貯めていくことが重要です。
玄関扉の交換で快適な住まいを
マンションの玄関扉や窓といった開口部は外側が共用部分に当たることから
築年数の経ったマンションで全戸一斉に玄関扉や窓の交換を行うことがあります。
(国土交通省が作成している「標準管理規約」では開口部の交換を含めたリフォームを
個人で実施することを認める条文があることからマンションによっては個人で交換可能な
場合もあります)
玄関扉は劣化が進行すると、扉自体や枠に錆が発生したり扉に歪みが生じてきて
正常な開閉が出来なくなってしまったり、見栄えが悪くなってしまったりしてきます。
また、築古のマンションですと、鍵も旧型のデザインだったり
鍵穴が1つだけだったりして、防犯性も心もとないです。
その為、玄関扉の交換が必要となってきます。
国土交通省作成の長期修繕計画作成ガイドラインでは
玄関扉の交換目安を築34年~38年に設定していますが
玄関扉の設置されている位置や環境により劣化の進行はまちまちですので
ガイドラインはあくまでも目安としてとらえ
ご自身のマンションの劣化具合を実際みて交換をご検討いただくのが宜しいかと思います。
弊社で管理しているマンションでも、先日玄関扉の一斉交換を行ったところがありました。
築25年程のマンションですが、枠や扉の錆が目立ってきて
修繕を要望する声が多くなってきたことから
理事会で検討し、玄関扉の全戸一斉交換が総会で可決承認されました。
工事にも立ち合いましたが、玄関扉の交換を行うとマンションの見栄えがかなり良くなります。
また、それだけではなく、断熱性・防犯性・遮音性の向上や、
レバーハンドルからプッシュプルハンドルへ変更したことにより利便性も向上しました。
現在、玄関扉の交換はカバー工法(既存の枠を新しい枠で覆って扉を交換する工法)が
主流となっており、
今回交換したマンションもカバー工法で交換しました。
工期の短縮や費用面でメリットが大きいためですがデメリットとしては
枠を覆った分だけ開口部が僅かに小さくなることがあげられます。
玄関扉の交換の最大のハードルは費用面だと思います。
マンションの規模により大きく変わってきますが
戸あたり30万円程度が相場のようです。
全戸一斉交換できる費用の確保が難しいようでしたら
上記に記載したように、管理規約の改定により
開口部の交換を含めたリフォームを管理組合で認めることも必要になってくると思います。
マンションの実情に応じて管理組合で検討してみてはいかがでしょうか。
水道管の凍結予防
寒さが厳しい季節になると多いトラブルが水道管の凍結です。
弊社で管理させていただいている埼玉のマンションでも
早朝に凍結が発生することがありますが
そのままの状態で放置してしまうと、まれに水道管が破裂してしまうことがあります。
破裂してしまうと水道業者さんに修理を依頼しなければなりませんので
そうならないために予め凍結を防ぐ対策が重要となってきます。
凍結の予防
水道管や蛇口に、布などを巻き付けて熱が逃げないようにします。
メーターボックスの中も凍りやすいので、布を詰めたりして忘れずに保温してください。
凍結してしまったら
布などを巻き付けた部分にぬるま湯をゆっくりとかけてください。
この時熱湯を使用するのは厳禁です。水道管が破裂する恐れがあります。
水道管が破裂してしまったら
破裂箇所から水が噴き出してしまいますので、まずは水道管の元栓を閉めてください。
元栓は一般的に水道メーターの隣にあります。
トイレも含め、室内の水が一切使えなくなりますのでご注意ください。
その後、水道業者さんや水道局に修理を依頼してください。
水道管が破裂するような気温の場合、
近隣の地域で同様に破裂トラブルが多発している可能性があり、
水道業者さんが手いっぱいで修理が遅れてしまうことがあります。
そうならないよう水道管を凍結させない予防が重要です。
マンションですと共用の散水栓以外の水道管はパイプスペース内で保温ラッキングされていることがほとんどですが
経年劣化でラッキングが破れて水道管が一部露出していると
凍結の原因となりますのでご注意ください。