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漏水トラブル

2013年12月11日 / カテゴリ:トラブル

水道管の腐食を起因とした漏水トラブルです。

 

配管材料にはいくつかの種類がありますが、昭和45年半ばまでは防錆(ぼうせい)
のために内面を亜鉛めっきした「水道用亜鉛めっき鋼管」が多くのマンションで
採用されていました。

 

当時としては最適でしたが、亜鉛が溶出して鉄部が露出すると腐食が始まる
難点があり、こうした弱点が配管の寿命を縮めることとなったのです。

 

その結果、技術開発によって以後のマンションでは塩化ビニールやステンレスを
使用することで問題は鎮静化の方向に向かいましたが、当時に建てられた高経年
マンションでは赤水や漏水トラブルが多発するようになったのです。

 

 

なぜ、古いマンションでは配管からの漏水トラブルが絶えないのでしょうか?

 

そこには共同住宅ならではの理由が存在します。

 

まず1つ目が設計上の問題。
最近の分譲マンションは二重床・二重天井が主流になっていますが、30年以上も
前のマンションになると床下の配管は埋設されていることが珍しくなかったのです。

 

天井高を確保しようとコンクリートスラブの上に直接、カーペットやフローリング
を敷設したため、床下を通る配管は軽量(気泡)コンクリートに埋められて
しまっているのです。

 

いざ更新(取り換え)しようと思っても簡単には事が運ばず、コンクリートを
削るという大掛かりな工事になってしまうことが組合員の腰を重くしたのでした。

 

そこで、埋設せずにコンクリートスラブの下(=下階の天井裏)に排水管を
施工することで、維持管理に配慮したマンションが登場するようになったのです。

 

これによりメンテナンスがしやすくなると思われましたが、一転、予期せぬ
新たな問題が浮上することとなってしまったのです。

 

 

下階の天井裏を通る横引き配管(枝管)が「専有部分」なのか「共用部分」
なのか、2つ目の問題です。

 

スラブ下配管が専有部分だとすると、維持管理の責任主体は区分所有者本人に
なります。

 

各個人の裁量と費用負担において、おのおのが工事を行わなければなりません。

 

一方、共用部分だとすると責任主体は管理組合になるため、区分所有者全員に
よる費用負担で、管理組合が工事を計画・実施することになるわけです。

 

 

直接、目に触れる機会が少ないため、どうしても配管に対する関心は低くなって
しまうのが3つ目の問題です。

 

水道管の更新は、分譲マンションに住んでいて1回あるかないかといった頻度の
工事のため、その必要性を認知するにも時間が必要となるのです。

 

使用されている配管材料や劣化具合、マンションの規模や築年数によっても
工事内容は異なり、専門性の高さが追い討ちをかけて、さらに管理組合の足は
遠のきます。

 

さらに、必要な情報が得にくいことも一因となってしまいます。管理会社に
丸投げするのは不安だが、とはいえ、どこに相談したらいいのか分からない。

 

こうした情報の慢性的な不足が工事の遅れを助長してしまうのです。

 

管理規約に「専有部分である設備のうち、共用部分と構造上一体となった部分の
管理を共用部分の管理と一体として行なう必要があるときは、管理組合がこれを
行うことができる」等と盛り込んでおくと、管理組合主導で専有部分と共用部分の
一体工事が行えるようになるのではないでしょうか。

 

 

平成12年3月、最高裁から出された判決では下階の天井裏を通るスラブ下配管は
共用部分に当たると判示しています。

 

707号室の台所・洗面所・風呂・トイレから出る汚水については、同室の
床下コンクリートスラブを貫通して607号室の天井裏に配された枝管を通じて
本管(タテ管)に流れる構造になっている。

 

そのため、707号室から点検・修理を行うことは不可能であり、607号室から
その天井裏に入ってこれを実施するしか方法はない。

 

こうした事実関係のもとにおいては、その構造および設置場所に照らすと
本件排水管は専有部分に属しない建物の付属物に当たり、かつ、区分所有者全員の
共用部分に当たると解するのが相当である。と判断されました。