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組合員の相続人がいない場合、滞納となる管理費等はどうする?

2023年8月28日 / カテゴリ:トラブル

組合員(区分所有者)が亡くなったとき、通常はご家族の方が該当する部屋を相続し、

管理費や修繕積立金等の支払いを引き継ぎます。

しかし、稀にあるのが、相続人がいないというケースです。

法定相続人がそもそも存在しない場合はもとより、

存在する法定相続人がすべて相続放棄をしてしまうという場合も当てはまります。

問題なのは相続人がいないと、管理費等の納付が止まってしまうことです。

実際の事例ですが、亡くなった組合員は離婚し配偶者がおらず、

同居していた息子さんも相続を放棄されました。

管理組合では管理費等の請求先を探すため、弁護士に依頼し、

他のお子様方とも交渉して頂きましたが、

全員相続を放棄されました。ご両親は他界されているため、さらに弁護士を通じて、

ご本人の兄弟姉妹の方々もすべて探し当て、交渉していただきましたが、

やはり放棄されてしまいました。

このような場合、管理組合が取り得る手段は、相続財産清算人の選任の申し立てです。

管理組合にて家庭裁判所に選任の申し立てを行います。

これによって選任される相続財産清算人が、遺産の管理・処分を行いますので、

その際に管理組合が届け出た未納の管理費等が回収できます。

手続きの大まかな流れは以下の通りです。

 

1)相続財産清算人の選任と相続人捜索の公告

家庭裁判所は、相続財産清算人の選任をしたこと、及び、

当該被相続人の相続人がいる場合には申し出るよう公告をします。

相続人捜索の公告は、6か月以上の期間を定めなければならず、

この期間内に相続人が申し出た場合には、

遺産はその相続人に承継されることになるので、

相続財産清算の手続は終了することになります。

 

2)債権申出の公告

家庭裁判所は、上記公告に加え、当該被相続人に対する債権者や受遺者がいる場合には

届け出るよう公告します。

ここで管理組合も債権者として未納となっている管理費等の額を届け出ます。

この届出については2か月以上の期間が定められます。

期間満了後、届け出られた債権者と受遺者に対して、遺産から弁済がなされます。

この弁済により遺産がすべてなくなった場合は、相続財産清算手続は終了します。

 

3)相続人不存在の確定

相続人捜索の公告期間が満了し、その間に相続人が申し出なかった場合、

相続人不存在が確定します。確定までの期間は最短で6カ月です。

 

このような申し立てを行うに関しては、当然費用がかかります。

手続きを委託する弁護士への報酬や実費、裁判所には予納金を事前に支払わねばなりません。

従ってこの申し立てを行うにあたっては、要する費用や期間にも鑑みて、

管理規約で滞納管理費等の回収にかかる法的措置が、

理事会の決議で可能とされている場合でも、

念のため、予算の確保も含めて総会での決議を得ておくことが望ましいと思われます。

ちなみに、相続人がいないと、たとえ該当物件に金融機関の抵当権が設定されていても、

金融機関は競売の申し立てができません。

競売申し立てが可能であれば、区分所有法の定めに基づき、

管理組合は競落人に管理費等の未収分を請求し回収できますが、

この方法は使えないことになります。

金融機関としても管理組合と同様に、相続財産清算人選任の申し立てを行わなければ、

抵当権を実行しての債権回収は不可能なのです。

以上の事例にみるように、相続人不在に関わるトラブルは管理組合にとって、

極めて厄介な事案だと言えます。

弁護士や管理会社とも十分に連携を図りつつ、滞納管理費等の回収に至るまで、

粘り強い取り組みが必要でしょう。