マンションお役立ち情報

支払督促の注意点

2023年11月28日 / カテゴリ:マンション管理, 修繕積立金, 管理費

マンションを健全に維持管理していくためには

管理費や修繕積立金(以下「管理費等」)の資金はとても重要ですが

管理で頭を悩ます問題に管理費等の滞納があげられます。

管理費等はそれぞれのマンションで毎月決められた日に

決められた金額を入金いただくのが原則ですが

残念ながら入金が滞る方は一定数おられます。

滞納者のなかには数か月、数年単位で滞納する方もいるので

管理組合はマンション維持管理の資金を確保するために

滞納した管理費等を回収しなければなりません。

回収の方法としては督促状の送付や電話での督促等さまざまですが

なかには注意が必要な方法もあります。

 

以前、別の管理会社から弊社に管理を変更して頂いた管理組合の理事長から聞いた話ですが

以前の管理会社に滞納者への回収方法として「支払督促」を勧められたため

それに応じたところ、滞納者から支払えないとの異議申し立てがあり

そのまま自動的に通常訴訟へ発展、裁判所に行かなくてはならなくなり困った、

ということがあったそうです。23485419_m

 

「支払督促」とは、債権者からの申立てに基づいて

簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。

あまり費用をかけずに裁判所からの支払い命令を得ることができ

強制執行もできるようになりますが、

債務者から異議申し立てがあると、そのまま通常訴訟へ発展してしまうデメリットがあります。

そうなると弁護士を探す時間もあまりありませんので

代表者である理事長が裁判所へ行かなくてはならなくなります。

そうならないように、支払督促を行う場合は事前に弁護士に相談する等

異議申し立てに備えることが重要です。

 

ちなみに、滞納があるお部屋が売却された場合でも滞納は消滅せず

次の所有者(特定承継人)に引き継がれますが

管理費等は5年で時効を迎えてしまいますので

時効を迎える前に法的措置をおこない、時効を更新するよう心がけましょう。

玄関扉の交換で快適な住まいを

2023年9月22日 / カテゴリ:マンションの老朽化, 長期修繕計画

マンションの玄関扉や窓といった開口部は外側が共用部分に当たることから

築年数の経ったマンションで全戸一斉に玄関扉や窓の交換を行うことがあります。

(国土交通省が作成している「標準管理規約」では開口部の交換を含めたリフォームを

個人で実施することを認める条文があることからマンションによっては個人で交換可能な

場合もあります)

 

玄関扉は劣化が進行すると、扉自体や枠に錆が発生したり扉に歪みが生じてきて

正常な開閉が出来なくなってしまったり、見栄えが悪くなってしまったりしてきます。

また、築古のマンションですと、鍵も旧型のデザインだったり

鍵穴が1つだけだったりして、防犯性も心もとないです。

その為、玄関扉の交換が必要となってきます。

 

国土交通省作成の長期修繕計画作成ガイドラインでは

玄関扉の交換目安を築34年~38年に設定していますが

玄関扉の設置されている位置や環境により劣化の進行はまちまちですので

ガイドラインはあくまでも目安としてとらえ

ご自身のマンションの劣化具合を実際みて交換をご検討いただくのが宜しいかと思います。

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弊社で管理しているマンションでも、先日玄関扉の一斉交換を行ったところがありました。

築25年程のマンションですが、枠や扉の錆が目立ってきて

修繕を要望する声が多くなってきたことから

理事会で検討し、玄関扉の全戸一斉交換が総会で可決承認されました。

工事にも立ち合いましたが、玄関扉の交換を行うとマンションの見栄えがかなり良くなります。

また、それだけではなく、断熱性・防犯性・遮音性の向上や、

レバーハンドルからプッシュプルハンドルへ変更したことにより利便性も向上しました。

 

現在、玄関扉の交換はカバー工法(既存の枠を新しい枠で覆って扉を交換する工法)が

主流となっており、

今回交換したマンションもカバー工法で交換しました。

工期の短縮や費用面でメリットが大きいためですがデメリットとしては

枠を覆った分だけ開口部が僅かに小さくなることがあげられます。

 

玄関扉の交換の最大のハードルは費用面だと思います。

マンションの規模により大きく変わってきますが

戸あたり30万円程度が相場のようです。

全戸一斉交換できる費用の確保が難しいようでしたら

上記に記載したように、管理規約の改定により

開口部の交換を含めたリフォームを管理組合で認めることも必要になってくると思います。

マンションの実情に応じて管理組合で検討してみてはいかがでしょうか。

組合員の相続人がいない場合、滞納となる管理費等はどうする?

2023年8月28日 / カテゴリ:トラブル

組合員(区分所有者)が亡くなったとき、通常はご家族の方が該当する部屋を相続し、

管理費や修繕積立金等の支払いを引き継ぎます。

しかし、稀にあるのが、相続人がいないというケースです。

法定相続人がそもそも存在しない場合はもとより、

存在する法定相続人がすべて相続放棄をしてしまうという場合も当てはまります。

問題なのは相続人がいないと、管理費等の納付が止まってしまうことです。

実際の事例ですが、亡くなった組合員は離婚し配偶者がおらず、

同居していた息子さんも相続を放棄されました。

管理組合では管理費等の請求先を探すため、弁護士に依頼し、

他のお子様方とも交渉して頂きましたが、

全員相続を放棄されました。ご両親は他界されているため、さらに弁護士を通じて、

ご本人の兄弟姉妹の方々もすべて探し当て、交渉していただきましたが、

やはり放棄されてしまいました。

このような場合、管理組合が取り得る手段は、相続財産清算人の選任の申し立てです。

管理組合にて家庭裁判所に選任の申し立てを行います。

これによって選任される相続財産清算人が、遺産の管理・処分を行いますので、

その際に管理組合が届け出た未納の管理費等が回収できます。

手続きの大まかな流れは以下の通りです。

 

1)相続財産清算人の選任と相続人捜索の公告

家庭裁判所は、相続財産清算人の選任をしたこと、及び、

当該被相続人の相続人がいる場合には申し出るよう公告をします。

相続人捜索の公告は、6か月以上の期間を定めなければならず、

この期間内に相続人が申し出た場合には、

遺産はその相続人に承継されることになるので、

相続財産清算の手続は終了することになります。

 

2)債権申出の公告

家庭裁判所は、上記公告に加え、当該被相続人に対する債権者や受遺者がいる場合には

届け出るよう公告します。

ここで管理組合も債権者として未納となっている管理費等の額を届け出ます。

この届出については2か月以上の期間が定められます。

期間満了後、届け出られた債権者と受遺者に対して、遺産から弁済がなされます。

この弁済により遺産がすべてなくなった場合は、相続財産清算手続は終了します。

 

3)相続人不存在の確定

相続人捜索の公告期間が満了し、その間に相続人が申し出なかった場合、

相続人不存在が確定します。確定までの期間は最短で6カ月です。

 

このような申し立てを行うに関しては、当然費用がかかります。

手続きを委託する弁護士への報酬や実費、裁判所には予納金を事前に支払わねばなりません。

従ってこの申し立てを行うにあたっては、要する費用や期間にも鑑みて、

管理規約で滞納管理費等の回収にかかる法的措置が、

理事会の決議で可能とされている場合でも、

念のため、予算の確保も含めて総会での決議を得ておくことが望ましいと思われます。

ちなみに、相続人がいないと、たとえ該当物件に金融機関の抵当権が設定されていても、

金融機関は競売の申し立てができません。

競売申し立てが可能であれば、区分所有法の定めに基づき、

管理組合は競落人に管理費等の未収分を請求し回収できますが、

この方法は使えないことになります。

金融機関としても管理組合と同様に、相続財産清算人選任の申し立てを行わなければ、

抵当権を実行しての債権回収は不可能なのです。

以上の事例にみるように、相続人不在に関わるトラブルは管理組合にとって、

極めて厄介な事案だと言えます。

弁護士や管理会社とも十分に連携を図りつつ、滞納管理費等の回収に至るまで、

粘り強い取り組みが必要でしょう。

 

専用使用権について

2023年7月27日 / カテゴリ:用語集

マンションは「専有部分」とそれ以外の「共用部分」に分かれています。

「専有部分」はお部屋内、個人の所有(区分所有)となり、個人の財産です。

逆に「共用部分」はマンションの区分所有者全員の所有となり

共有の財産となる部分のことを言いますが

共用部分には専用使用権が付与された「専用使用部分」というものが存在します。

 

「専用使用部分」は特定の所有者が排他的に使用できる部分のことで

代表的なのは「バルコニー」。

仕切りで覆われていてそのお部屋の居住者しか使用しないため

感覚としては個人の所有に思えますが

区分所有者全員の所有となる「共用部分」であると同時に

その人しか通常使用しない「専用使用部分」となります。

※緊急時は避難経路になることもあります。

 

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バルコニーの他に、専用使用部分には次のようなものがあります。

玄関扉外側、インターホン、玄関ポーチ、室外機置場、窓ガラス(サッシ含む)

専用庭、駐車場、駐輪場、給排水管の一部など・・・

「お部屋の外」にあって、「その人しか使わない」部分と考えれば

「専用使用部分」かそうでないかの区別がつきやすいと思います。

 

「専用使用部分」は「共用部分」であることから

計画的に全体で修繕を行うことがありますが

通常の管理は専用使用権を有している人が行うことになるため

例えばインターホンの修理や庭の草むしり、集合ポストのダイヤル交換は

一般的に個人でおこなうことになります。

もちろん、管理組合でおこなうこともありますが

それは各管理組合の方針により異なります。

 

弊社で管理させて頂いているマンションでも

集合ポストのダイヤルが故障した時や、玄関ドアの建付けが悪くなった時などに

管理組合の方針により、管理組合の費用負担で修理しているところもあります。

但し、「専用使用部分」は取り扱い方法や使用頻度により劣化が異なってくる部分が多いので

基本的には個人で直すという認識でいて

壊れたら一応管理組合に相談してみるのが良いと思います。

また、玄関等一部の「専用使用部分」については

景観の観点から修理はいいが交換は不可としているところが多いと思います。

後にトラブルにならないように、こちらも事前に管理組合に確認しましょう。

管理に係る重要事項調査報告書について

2023年5月22日 / カテゴリ:マンション管理

中古マンションを売買する際は、仲介会社から重要事項説明書が発行され

内容について説明がありますが

その内容の多くは管理会社が仲介会社に発行する

「管理に係る重要事項調査報告書(以下「調査報告書」)」を

参考に作成されています。

 

調査報告書は、利害関係者、つまり中古マンションの購入希望者から

マンションに関する重要な事柄について照会があった際に

管理会社が発行するマンションに関する資料のことです。

※自主管理マンションの場合、理事会役員の方が作成している

 もしくは作成自体していないケースもあります。

 

調査報告書の内容は管理会社によって違いがありますが

弊社が所属しているマンション管理業協会作成の調査報告書記載例には

次のような項目があります。

・建物に関すること(竣工年月、共用部分の範囲、持分など)

・管理組合に関すること(収支状況、滞納状況、借入金の有無、総会・理事会の活動状況など)

・共用部分で加入している保険に関すること

・駐車場、駐輪場に関すること

・管理費、修繕積立金、各種使用料に関すること(対象住戸の滞納の有無、値上げ予定など)

・修繕履歴に関すること

・マンションのルールに関すること(ペットの制限、楽器等音の制限、リフォームの制限

 民泊の制限など)

・管理員、管理会社に関すること(勤務体系、連絡先など)

 

その他に、電力一括受電に関すること、アスベストに関すること、耐震診断に関すること

テレビ視聴に関すること、インターネットに関することや

最近ですと、管理計画認定制度に関すること、マンション管理適正評価制度に関することも

記載項目となっており

実に多様な項目が記載されています。

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調査報告書をみれば、マンションの運営状況がよくわかります。

通常契約を取り交わす前に、仲介会社は調査報告書を取得しているはずですが

発行には手数料が掛かる場合がほとんどですので

仲介会社の中には調査報告書を取得しなかったり

契約が決まらないと取得しないといったこともあります。

その場合、大概は所有者の方に事前に管理組合の収支状況や

ルール等をヒアリングしていると思いますが

そのマンションのことを知らずに

買い手希望の方に案内している可能性もあるので注意しましょう。

また、マンションの運営状況もルールも日々変化しますので

買い手希望の方は購入前に調査報告書の発行時期を

最新であるか確認することが望ましいです。

 

購入後のトラブルを避けるために

マンションの情報は仲介会社に出来るだけ確認するようにしましょう。