組合員の相続人がいない場合、滞納となる管理費等はどうする?
組合員(区分所有者)が亡くなったとき、通常はご家族の方が該当する部屋を相続し、
管理費や修繕積立金等の支払いを引き継ぎます。
しかし、稀にあるのが、相続人がいないというケースです。
法定相続人がそもそも存在しない場合はもとより、
存在する法定相続人がすべて相続放棄をしてしまうという場合も当てはまります。
問題なのは相続人がいないと、管理費等の納付が止まってしまうことです。
実際の事例ですが、亡くなった組合員は離婚し配偶者がおらず、
同居していた息子さんも相続を放棄されました。
管理組合では管理費等の請求先を探すため、弁護士に依頼し、
他のお子様方とも交渉して頂きましたが、
全員相続を放棄されました。ご両親は他界されているため、さらに弁護士を通じて、
ご本人の兄弟姉妹の方々もすべて探し当て、交渉していただきましたが、
やはり放棄されてしまいました。
このような場合、管理組合が取り得る手段は、相続財産清算人の選任の申し立てです。
管理組合にて家庭裁判所に選任の申し立てを行います。
これによって選任される相続財産清算人が、遺産の管理・処分を行いますので、
その際に管理組合が届け出た未納の管理費等が回収できます。
手続きの大まかな流れは以下の通りです。
1)相続財産清算人の選任と相続人捜索の公告
家庭裁判所は、相続財産清算人の選任をしたこと、及び、
当該被相続人の相続人がいる場合には申し出るよう公告をします。
相続人捜索の公告は、6か月以上の期間を定めなければならず、
この期間内に相続人が申し出た場合には、
遺産はその相続人に承継されることになるので、
相続財産清算の手続は終了することになります。
2)債権申出の公告
家庭裁判所は、上記公告に加え、当該被相続人に対する債権者や受遺者がいる場合には
届け出るよう公告します。
ここで管理組合も債権者として未納となっている管理費等の額を届け出ます。
この届出については2か月以上の期間が定められます。
期間満了後、届け出られた債権者と受遺者に対して、遺産から弁済がなされます。
この弁済により遺産がすべてなくなった場合は、相続財産清算手続は終了します。
3)相続人不存在の確定
相続人捜索の公告期間が満了し、その間に相続人が申し出なかった場合、
相続人不存在が確定します。確定までの期間は最短で6カ月です。
このような申し立てを行うに関しては、当然費用がかかります。
手続きを委託する弁護士への報酬や実費、裁判所には予納金を事前に支払わねばなりません。
従ってこの申し立てを行うにあたっては、要する費用や期間にも鑑みて、
管理規約で滞納管理費等の回収にかかる法的措置が、
理事会の決議で可能とされている場合でも、
念のため、予算の確保も含めて総会での決議を得ておくことが望ましいと思われます。
ちなみに、相続人がいないと、たとえ該当物件に金融機関の抵当権が設定されていても、
金融機関は競売の申し立てができません。
競売申し立てが可能であれば、区分所有法の定めに基づき、
管理組合は競落人に管理費等の未収分を請求し回収できますが、
この方法は使えないことになります。
金融機関としても管理組合と同様に、相続財産清算人選任の申し立てを行わなければ、
抵当権を実行しての債権回収は不可能なのです。
以上の事例にみるように、相続人不在に関わるトラブルは管理組合にとって、
極めて厄介な事案だと言えます。
弁護士や管理会社とも十分に連携を図りつつ、滞納管理費等の回収に至るまで、
粘り強い取り組みが必要でしょう。
専用使用権について
マンションは「専有部分」とそれ以外の「共用部分」に分かれています。
「専有部分」はお部屋内、個人の所有(区分所有)となり、個人の財産です。
逆に「共用部分」はマンションの区分所有者全員の所有となり
共有の財産となる部分のことを言いますが
共用部分には専用使用権が付与された「専用使用部分」というものが存在します。
「専用使用部分」は特定の所有者が排他的に使用できる部分のことで
代表的なのは「バルコニー」。
仕切りで覆われていてそのお部屋の居住者しか使用しないため
感覚としては個人の所有に思えますが
区分所有者全員の所有となる「共用部分」であると同時に
その人しか通常使用しない「専用使用部分」となります。
※緊急時は避難経路になることもあります。
バルコニーの他に、専用使用部分には次のようなものがあります。
玄関扉外側、インターホン、玄関ポーチ、室外機置場、窓ガラス(サッシ含む)
専用庭、駐車場、駐輪場、給排水管の一部など・・・
「お部屋の外」にあって、「その人しか使わない」部分と考えれば
「専用使用部分」かそうでないかの区別がつきやすいと思います。
「専用使用部分」は「共用部分」であることから
計画的に全体で修繕を行うことがありますが
通常の管理は専用使用権を有している人が行うことになるため
例えばインターホンの修理や庭の草むしり、集合ポストのダイヤル交換は
一般的に個人でおこなうことになります。
もちろん、管理組合でおこなうこともありますが
それは各管理組合の方針により異なります。
弊社で管理させて頂いているマンションでも
集合ポストのダイヤルが故障した時や、玄関ドアの建付けが悪くなった時などに
管理組合の方針により、管理組合の費用負担で修理しているところもあります。
但し、「専用使用部分」は取り扱い方法や使用頻度により劣化が異なってくる部分が多いので
基本的には個人で直すという認識でいて
壊れたら一応管理組合に相談してみるのが良いと思います。
また、玄関等一部の「専用使用部分」については
景観の観点から修理はいいが交換は不可としているところが多いと思います。
後にトラブルにならないように、こちらも事前に管理組合に確認しましょう。
管理に係る重要事項調査報告書について
中古マンションを売買する際は、仲介会社から重要事項説明書が発行され
内容について説明がありますが
その内容の多くは管理会社が仲介会社に発行する
「管理に係る重要事項調査報告書(以下「調査報告書」)」を
参考に作成されています。
調査報告書は、利害関係者、つまり中古マンションの購入希望者から
マンションに関する重要な事柄について照会があった際に
管理会社が発行するマンションに関する資料のことです。
※自主管理マンションの場合、理事会役員の方が作成している
もしくは作成自体していないケースもあります。
調査報告書の内容は管理会社によって違いがありますが
弊社が所属しているマンション管理業協会作成の調査報告書記載例には
次のような項目があります。
・建物に関すること(竣工年月、共用部分の範囲、持分など)
・管理組合に関すること(収支状況、滞納状況、借入金の有無、総会・理事会の活動状況など)
・共用部分で加入している保険に関すること
・駐車場、駐輪場に関すること
・管理費、修繕積立金、各種使用料に関すること(対象住戸の滞納の有無、値上げ予定など)
・修繕履歴に関すること
・マンションのルールに関すること(ペットの制限、楽器等音の制限、リフォームの制限
民泊の制限など)
・管理員、管理会社に関すること(勤務体系、連絡先など)
その他に、電力一括受電に関すること、アスベストに関すること、耐震診断に関すること
テレビ視聴に関すること、インターネットに関することや
最近ですと、管理計画認定制度に関すること、マンション管理適正評価制度に関することも
記載項目となっており
実に多様な項目が記載されています。
調査報告書をみれば、マンションの運営状況がよくわかります。
通常契約を取り交わす前に、仲介会社は調査報告書を取得しているはずですが
発行には手数料が掛かる場合がほとんどですので
仲介会社の中には調査報告書を取得しなかったり
契約が決まらないと取得しないといったこともあります。
その場合、大概は所有者の方に事前に管理組合の収支状況や
ルール等をヒアリングしていると思いますが
そのマンションのことを知らずに
買い手希望の方に案内している可能性もあるので注意しましょう。
また、マンションの運営状況もルールも日々変化しますので
買い手希望の方は購入前に調査報告書の発行時期を
最新であるか確認することが望ましいです。
購入後のトラブルを避けるために
マンションの情報は仲介会社に出来るだけ確認するようにしましょう。
給水トラブルの対処法
「蛇口から水が出なくなった」
生活上のトラブルで弊社にもたまにお問い合わせがあります。
断水の原因には主に次のケースがあげられますので
いざという時の為に知っておくと安心です。
パイプスペースの給水バルブが閉まっている
パイプスペースとは給排水管が配管されているスペースのことで
そこから各お部屋に分岐されています。
マンションでは2部屋分の給排水管を1箇所にまとめているパイプスペースが多くありますので
例えば、お隣の部屋がリフォームをしていたり、引っ越しをされる際に
誤って別のお部屋の給水バルブを閉めてしまい断水することがあります。
この場合、給水バルブを開けることで断水は改善されます。
給水設備の工事や点検等をしている
マンションには貯水槽や給水ポンプ等、様々な共用の給水設備があります。
※どのような設備があるかはマンションによって異なります。
これらは定期的にメンテナンスをする必要がありますが
その際に断水が発生することがあります。
例えば貯水槽を清掃する時は中のお水を一度全て抜いて空にしますので
清掃中は断水となります。
大抵の場合、事前に断水のお知らせが業者から通知されると思いますので
マンションの掲示板やポストはマメに確認しておきましょう。
給水設備にトラブルが発生している
マンションの給水設備には給水ポンプ等の機械がありますので
機械トラブル等で断水が発生することがあります。
自分以外のお部屋でも断水している場合はその可能性が高いです。
この場合個人で復旧することは難しいので
管理会社や給水設備業者に依頼して対応してもらいましょう。
勿論上記以外の理由で断水が発生することもあります。
特に近年自然災害が原因で長期間断水している報道などもみかけますので
日頃からの備えも考えていきたいものです。
水道管の凍結予防
寒さが厳しい季節になると多いトラブルが水道管の凍結です。
弊社で管理させていただいている埼玉のマンションでも
早朝に凍結が発生することがありますが
そのままの状態で放置してしまうと、まれに水道管が破裂してしまうことがあります。
破裂してしまうと水道業者さんに修理を依頼しなければなりませんので
そうならないために予め凍結を防ぐ対策が重要となってきます。
凍結の予防
水道管や蛇口に、布などを巻き付けて熱が逃げないようにします。
メーターボックスの中も凍りやすいので、布を詰めたりして忘れずに保温してください。
凍結してしまったら
布などを巻き付けた部分にぬるま湯をゆっくりとかけてください。
この時熱湯を使用するのは厳禁です。水道管が破裂する恐れがあります。
水道管が破裂してしまったら
破裂箇所から水が噴き出してしまいますので、まずは水道管の元栓を閉めてください。
元栓は一般的に水道メーターの隣にあります。
トイレも含め、室内の水が一切使えなくなりますのでご注意ください。
その後、水道業者さんや水道局に修理を依頼してください。
水道管が破裂するような気温の場合、
近隣の地域で同様に破裂トラブルが多発している可能性があり、
水道業者さんが手いっぱいで修理が遅れてしまうことがあります。
そうならないよう水道管を凍結させない予防が重要です。
マンションですと共用の散水栓以外の水道管はパイプスペース内で保温ラッキングされていることがほとんどですが
経年劣化でラッキングが破れて水道管が一部露出していると
凍結の原因となりますのでご注意ください。