長期修繕計画の作成について
長期修繕計画の作成の前提条件
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長期修繕計画の作成に当たっては、4つの前提条件があります。
(1)推定修繕工事は、建物および設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、
回復させる修繕工事を基本とする。
(2)区分所有者の要望など必要に応じて、建物および設備の性能を向上させる
改修工事を設定する。
(3)計画期間において、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に実施する。
(4)計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて判断する。
大規模修繕工事の回数を重ねるごとに、改良の割合を大きくした改修工事と
することが重要となります。
長期修繕計画標準様式の利用
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長期修繕計画は、標準様式を参考として作成します。
マンションには様々な形態、形状、様式等があるうえ、立地条件も異なって
いることから、これらに応じた適切な長期修繕計画とするため、必要に応じて
標準仕様の内容を追加して使用します。
分譲時における分譲事業者、又は見直し時において管理組合から依頼を受けた
専門家は、標準様式を参考としています。
(標準様式は中高層の単棟型マンションを想定)
長期計画修繕計画の作成方法
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長期修繕計画がないと、適切な修繕工事の時期が判断できないばかりか、
修繕工事に必要な額の修繕積立金が確保できない事態が発生することが考え
られます。
ただし、大規模な修繕工事の時期(通常、築後10年~15年)にありながら、
長期修繕計画がない場合は、長期修繕計画を作成してから工事を実施すると、
その作成や修繕工事の準備期間などで修繕工事の実施が3年~4年先になり、
適切な実施時期を逃してしまう恐れがあります。
個々の分譲マンションに適した長期修繕計画を作成するためには多大な労力と
専門的な知識が必要になりますので、作成実務を外部に委託する場合が多い
ようです。
しかし、作成の主体はあくまで管理組合であり、管理組合が内容を吟味する
事が必要です。
そのため、専門的知識をもつ所有者の参加を募るなどして、長期修繕計画を
作成するための専門委員会を設置することも必要と考えられます。
修繕積立金の改定の考え方
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長期修繕計画の計画期間内の修繕費用の総額を、全て修繕積立金でまかなえる
ように積立金の額を設定するのが原則です。
修繕積立金が不足している場合は、修繕工事の実施が必要な時期までに必要な
費用が確保できるように改定することが必要です。
修繕積立金の改定には総会の決議を経なくてはならず、なかなか合意が得ら
れない場合が多いようです。
長期修繕計画について説明するなど具体的な根拠を示しながら、修繕積立金の
改定の必要性について理解してもらうとともに修繕積立金で不足する額の一部を、
修繕工事の実施時に各所有者から徴収することを前提に修繕積立金を改定する
ことも考えられます。
このほかに、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)や民間金融機関から不足分の一部を
借り入れることを前提に改定することも考えられます。
しかし、修繕工事の実施後は、その後の修繕の実施に備えた修繕積立金を確保
するとともに借入金を返済しなくてはならなくなることに注意する必要があり
ます。
長期修繕計画とは
長期修繕計画とは
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一般に分譲マンションでは概ね10年~15年ごとに大規模な修繕工事の
実施が必要です。
この大規模な修繕工事には戸当たりでおよそ50万円~100万円程度の
費用がかかるとされています。
長期修繕計画とは、このように多額の費用が必要になる分譲マンションの
修繕工事を的確に実施するために、向こう20年~30年程度の期間を
見通して、いつ、どの部分を修繕するのか、そのためにはどのくらいの
費用がかかるのか、そして、その費用を各所有者がどのように負担しあう
のかを、あらかじめ計画するものなのです。
分譲マンションは、専有部分と共用部分で建物等が構成されており、共用部分に
ついては区分所有者全員で管理組合を構成し管理を行うこととなっています。
長期修繕計画と修繕積立金
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計画修繕を行うためには、長期修繕計画を作成し、修繕積立金を積み立てる
ことが必要です。
修繕工事を実施する際に必要となる多額の費用を確実に確保するために、
所有者が毎月積み立てるものが修繕積立金です。
修繕積立金は、長期修繕計画に基づき、修繕工事が必要な時に必要な費用が
確保できるように毎月の積立額を設定することが重要となるのです。
計画修繕の実施
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工事に関する計画の作成や実施は、施工会社等にお願いすることになりますが、
どのように行うのかという方針や、実施のための費用の負担は、分譲マンションの
所有者が協力しあい、合意のもとで決定することが必要です。
管理組合は、計画修繕の基本となる「長期修繕計画」と「修繕積立金」を
適切に確保するとともに、様々な考え方を持つ所有者の合意を形成し、実施に
向けた組織づくりを行うなど、円滑な計画修繕の実施に取り組むことが必要と
なります。
集会所の増築や駐車場の増設、居住者の高齢化に対応するためのスロープの
設置及び耐震性の向上等、グレードアップや機能の向上を図ること。
修繕工事と併せて実施するのが一般的です。
長期修繕計画の標準的な様式
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長期修繕計画は、将来実施する修繕工事の内容、時期、費用等を確定する
ものではなく、一定期間ごとに見直していくことを前提としています。
例えば、修繕工事の内容は、計画作成時のマンションの現状の仕様等を踏まえて
設定されますが、実際の修繕工事の実施時には、技術革新等により異なるもの
になることがあります。
また、計画期間を何年に設定するかによって、計画に盛り込まれる修繕工事の
内容も異なります(新築時の計画期間が30年の場合、修繕周期がこれを超える
修繕工事項目は盛り込まれていません)。
こうしたことからも、長期修繕計画は一定期間ごとに見直していくことが
必要となります。
適切な長期修繕計画を作成し、それに基づいた修繕積立金の設定を行うことが
不可欠となるため、「長期修繕計画標準様式」と「長期修繕計画作成ガイド
ライン」が国土交通省から平成20年6月に初めて発表されています。
管理委託契約の締結とは
管理規約の改定
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管理規約の改定は総会の議案事項となります。
組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成が必要となり、管理規約を
変更する場合、総会での十分な議論が必要ですが、事前にアンケート調査や
説明会などを実施し、変更案の趣旨について理解を得るとともに、組合員の
意見を聞き議案に反映させておくことが重要になります。
管理規約を変更する場合には、必ず議事録を残し、周知徹底する必要があります。
役員の選出
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平成23年7月の標準管理規約の改正は、役員のなり手不足等の課題に対応する
ため、役員の資格要件の緩和を行うこと等を主な内容とするものでした。
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改正前:
「理事又は監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、
総会で選任する。」
改正後:
「理事又は監事は、組合員のうちから、総会で選任する。」
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管理委託契約の締結
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管理委託契約締結には総会で承認が必要です。
管理組合がマンションの管理をマンション管理業者に対して委託する際に、
管理組合とマンション管理業者との間で締結される管理委託契約に係る契約書を、
当該マンション管理業者が、マンションの管理の適正化の推進に関する法律
第73条第1項に規定された書面として当該管理組合の管理者等に対して交付する
場合の指針として、国土交通省により作成されたものです。
簡単に言うと、管理会社と契約をするかの総会決議事項のことです。
管理組合にとって、組合運営のパートナーとなる管理会社との管理委託契約の
締結は非常に重要なものですので、契約の締結時(または更新時)においては、
重要事項の説明を受け、管理会社が行う業務内容についてよく理解しておく
ことが大切です。
議事録の作成
議事録の作成
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標準管理規約第49条では、総会の議事については、議長は、議事録を作成
しなければならない。
とあるように総会が終わったら、議事録を作成します。
開催日時、区分所有者総数、総議決権数、議題・議案の要領、報告事項の概要、
重要な質疑応答、採決の結果、賛否の区分所有者数、議決権数を記載し議長並び
に議長が指名する2名の出席者が署名・押印をします。
総会に出席ができなかった組合員が議事録を読んで、報告の概要や質疑応答の
やり取りがわかるように詳しく作成すると、管理組合内のコミュニケーション
がスムーズになるでしょう。
議事録の閲覧
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理事長は、総会議事録を保管し、組合員や利害関係人から書面による閲覧の
請求があったときは、マンション管理組合の総会議事録を閲覧させなければ
なりません。
この場合、総会議事録閲覧について、相当の日時、場所等を指定することが
できます。
また、議事録の保管場所を所定の掲示場所に掲示する必要があり、通常は管理
事務所の見えやすい位置に掲示している場合が多いようです。
※利害関係人とは、総会決議の拘束を当然に受ける賃借人等の専有部分の
占有者のほか、売買等によって区分所有権を取得しようとする者を言います。
議事録の保管期限
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区分所有法では、規約や総会議事録の保管を定めているものの、これらを
含む組合の保管期間については定めを置いてありません。
議事録の性質によって、永久に保管すべきものと、相当期間保管後に廃棄して
よいものとがあります。
性質上廃棄して差し支えない議事録であっても、規約等で保管期間の定めが
ない場合は、10年程度保管することが望まれます。
新たに、規約原本の作成をしないときなどは、いつ変更したのか根拠が不明に
なるため、規約原本の作成までは、必ず保管しておく必要があります。
議案の説明と議決権
議案の説明
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総会の2週間前 (標準管理規約第43条) までに発してある招集通知に議案書を
添付してあるので、総会の説明がスムーズにできます。
また、管理会社が説明を行う場合もあります。
▼ 説明が終わると質疑応答です。
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【質問の注意点】
1.会議の目的以外の質問はできません
2.質問者は回答者を指名できません
3.区分所有者のプライバシーに関する質問はできません
4.過去の総会の決議事項に関する質問はできません
【回答の注意点】
1.答えなくてよい質問には議長の判断で回答を拒否できる
2.最も説明に適した回答を指名するのは議長である
3.質問者が納得しなくとも合理的な説明がなされれば回答は終了する
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議決権
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管理組合の採決方法は、多数決ですが、組合員数と議決権数の両方を数えなく
てはなりません。
議決権とは各区分所有者が持っている議決に当たっての権利のことで、議決権数
とはその数です。
したがって、組合員数と同じではないのです。
標準管理規約第47条では、普通決議は出席組合員の議決権の過半数で決すると
あります。
管理規約に別段の定めが無い限り、組合員が所有する専有部分の床面積の割合に
よることになります。
つまり、総会議決権総数はマンションの戸数分存在するということです。